「ハードウェア」一筋のアップルが生成AI界の勝ち組となる理由

みなさんは今後の生成AI界はどのように進んでいくと思いますか。

誰もが知るChatGPTを開発したOpenAIが今後も市場を牛耳ると考える方もいれば、日本語能力に優れたClaudeの開発元Anthropicが逆転できると思う方もいると思います。

さまざまな考えがあると思いますが、私は意外にも「Apple」が生成AI界の勝者になると予想しています。

今回の記事ではそのAppleが生成AI界の勝ち組である根拠を述べていきたいと思います。

1. Appleはあえて生成AI開発をしていない

2024年3月18日、iPhoneにGoogleの生成AI「Gemini(ジェミニ)」の導入に向けた協議をAppleとGoogleが進めていることが明らかになりました。

このニュースを聞いて「AppleはAIに遅れてて、Googleの方が先を行っている」と考えた方もいると思います。

実際、このニュースに市場が反応し、Googleの株価は6%上がりました。

AppleがGoogleのAIを使いたいという姿勢を見せたことで、Googleが交渉において優位に立っていると捉えたのでしょう。

もしかしたら、Appleは自社で満足のいくAIが作れなかったのかもしれませんし、コストが大きすぎると判断し開発を断念したのかもしれません。

現在のAppleとGoogleの株価を比べてみると、Appleは年初来で8.42%下がっており、Googleは12.17%も上がっています。

株価 2024年1月1日 2024年4月1日 騰落率 時価総額
Apple(AAPL) 185.64ドル 170.00ドル -8.42% 2.625兆ドル
Google(GOOG) 139.56ドル 156.54ドル +12.17% 1.934兆ドル

AppleとGoogleで、生成AIへの対照的な姿勢が浮き彫りになっていると言っても過言ではないでしょう。Appleの方が生成AIブームに遅れており、Googleの方が進んでいるといったイメージがついてしまっています。

その理由はAppleがiPhoneやMacBookという圧倒的競合優位なハードを持っており、生成AIブームでもその優位性を発揮すると考えられるからです。

一方、GoogleのAI「Gemini」は他の大手企業の生成AIと競争を余儀なくされ、生成AI競争に勝つために莫大なコストを支払うことになると思います。

もちろんAppleは資金もありますし優秀なエンジニアがそろっているので、生成AIの開発が出来ない訳がありません。つまり、Appleは生成AIを作らずとも収益が入る打算があるといえます。

つまり、アップルはあえて生成AI開発に本腰を入れていなかったとも言えると思います。

AppleのCEO、ティム・クック氏が生成AI競争の過激化をもとより予想し、iPhone特化型の戦略を取ったゆえにGeminiとの提携に臨んでいることが見受けられます。

2. 検索エンジンすらAppleは作らなかった

実はこの生成AIの開発に限らず、Appleは独自の検索エンジンをリリースしていません。

AppleのMacコンピューターは1997年に生まれ、携帯の機能を統合したiPhoneは2007年に生まれましたが、当時から検索エンジンは作っていないのです。

そして意外かもしれませんが、Apple製品の検索エンジンのデフォルトをGoogleとして設定してもらうために、GoogleはAppleに年間約2兆円を支払っています

Appleの年間の売上が55兆円ほどなので、Appleの売上のうち4%~5%が自動でGoogleからの支払われる計算になります。

Googleがそれほどの大金を払うほどAppleでデフォルトとして検索エンジンが使われることの価値が高いことがわかります。また、Appleにとっては検索エンジンのデフォルト化は良いビジネスモデルとなっているのです。

Appleは独自の検索エンジンを作ることもできますが、開発コストが大きくなること、またGoogleからもらえるほどの安定した収益につながるとは限らないため、あえて検索エンジンは作りませんでした。

Googleはすでに検索エンジンの分野ではトップなので、Appleがここにコストを割いて参入していくのは得策ではないのでしょう。

この検索エンジンにおけるAppleの戦略が生成AIにおいても活用できることは明らかです。

検索エンジンを作らなかったことと同様に、今回もAppleは生成AIを作らず、他企業が開発したAIをデフォルトとして設定することで収益を上げるビジネスを採用すると考えられます。

3. コスト競争でいずれ追い込まれるAI企業と漁夫の利を企むApple

Appleがこのようなビジネスモデルを展開できる理由として、生成AI業界の激しい競争があることがあげられます。

すでに、生成AIを開発している企業はすでにたくさんあり、激しいAI開発競争が行われているのです。

ChatGPTを開発したOpenAI・マイクロソフト、Claudeを運営するAnthropic、GeminiのGoogle、PiのInflection、LlaMaのMeta、Mistral AI、イーロン・マスク氏のxAI、有名どころだけでこれだけのAI企業が出てきます。

生成AI業界の競争は厳しく、AIを運用するのに莫大なコストがかかるGPU代、サーバー代、開発費、人件費などで疲弊するAI企業も多いです。

すでに「ユーザーに寄り添うAI」をコンセプトのPiというAIを開発していたスタートアップ、Inflectionはマネタイズに苦戦し、優秀な人材もマイクロソフトに引き抜かれてしまっている現状です。

AI企業が会話型AIを有料化できないのには大きな理由があり、ChatGPTという優秀なAIが無料で使える点にあります。

現状ではOpenAIがGPT-3.5を無料にしており、GPT-3.5より性能の低いAIを持つ企業は無料を強いられていえるでしょう。

もちろんAIサービスに課金できないという訳ではありません。OpenAIはGPT-4のアクセスを月額20ドルとしており、Anthropicの最先端AIモデルClaude Opusも月額20ドルとしておりマネタイズを行っています。

しかし、これらのサービスが有料課金できるのも生成AIブームが起きてから期間が短く、AIの性能が日に日に進化を遂げていることが理由だと考えられます。

AIが進化しているのはとても良いことですが、いずれその進化にも限界が来ることが予想されます。そして、他のAIサービスの性能がChatGPTに追いつくのも時間の問題となっているのです。

もうすでに有料のGPT-4よりも日本語能力の高いClaude Sonnetは無料で使えます。画像生成AIのMidJourneyも有料ですが、他の画像生成AIのStable Diffusionなどは無料で使えるのです。

加えてGPT-5はYouTubeの字幕をもとに学習を進める議論が進められており、AIが学習に使えるデータはあと2年で限界を迎えると言われています。

つまり生成AIの性能が限界を迎えるのは近く、どの企業のAI性能も変らない時が近いうつに訪れることが予想できるのです。

そして多くのAI企業はGoogleが検索エンジンで取った戦略のように、AIサービスを無料にすることでユーザーを集め、企業に広告宣伝費を払ってもらうようなビジネスにしていくことは想像に難くありません。

これらのことを考えると生成AIそのものが無料化していくことが避けられないでしょう。生成AIはGoogleやBing、Yahoo!といった検索エンジンのように無料になっていくのです。

そのような状況になった時、Appleが今まで築いてきたハードウェアの強みが真に発揮されます。多くのAI企業がApple製品のデフォルト機能として組み込んでもらおうと交渉にくるのです。

自社AIがApple製品に導入してもらえれば、ユーザーを一気に獲得できるので、マネタイズが楽に出来ることは間違いありません。

そして、AI企業はAppleに自社サービスを使ってもらおうと躍起になるほど、Appleの相対的な立場はより生成AIという分野において有利になっていきます。

Appleもタダで生成AIサービスを導入するのではなく、ビジネスとしてその交渉を進めていくでしょう。

4.「ハードウェア」に専念するAppleこそが生成AI界の勝者となる

Appleの「ハードウェア」について上記で少し触れましたが、なぜ生成AI界においても優位な立場にたてるのか解説していきたいと思います。

Appleが世に出してきたハードウェアは業界でトップの座を占めてきました。現在iPhoneを使っている人の割合は全世界で24%にまで登り、スマートフォンの中で最も使われている機種となっています。

Macbookも世界市場の10%のシェアを獲得しており、トップ4位に位置しています。

Apple製品がこれほどまでに絶大な人気を誇る理由には、顧客に買いたいと思わせる「外観」と「機能性」を兼ね備えていることがあげられます。

AppleがだしているiPhoneやMacBookには、競合優位性の高い「アルミ切削(せっさく)加工」という技術が使われており、アルミ切削は他企業にはマネできない技術なのです。

アルミ切削加工というのは、アルミを削りだすことでつなぎ目のないボディを作ることができるという技術で、Apple製品の「外観」に大きく関わっています。

みなさんはApple製品が他のスマートフォンやパソコンよりカッコいいと思ったことはありませんか?

薄くて持ちやすいスタイリッシュな見た目に一度は惹かれたことがある人が多いと思います。その「カッコいい」、「使いたい」と思わせる魅力こそがアルミ切削によるものなのです。

この技術によってApple製品はユーザーが落としても壊れない「頑丈なボディ」と、どこへでも持ち運べる「薄さ」を手に入れることができました。

このアルミ切削の技術はコストが大きく大量生産には向かないと考えられていました。しかし、Appleは独自のサプライチェーンを築き上げることによって大量生産を実現したのです。

また、Appleの凄さはその見た目に限らず、高解像度で色彩を表現するディスプレイとスムーズな動作を再現するシステムを自前で作り上げました。

AppleはiPhoneやMacBookのハードウェアを作るだけではなく、中身のiOSやmacOSも作り上げ、ハードウェアに最適なソフトウェアを作り上げることができたのです。

他の企業にマネできない技術で顧客の感動を呼び起こし、多額のマーケティングによってAppleは現在の地位を確立しました。

このハードウェアの総合的な魅力こそがAppleの「ブランド力」であり、他社が生成AIスマートフォンを出したとしても揺るがない地位を築きあげているといえるでしょう。                                                                                                                                                                                                                                                                              

5. 生成AI界のトップ「エヌビディア」の牙城もあと3〜4年で崩れる

Appleが生成AIの勝ち組になるといってもすぐ先の将来ではないかもしれません。

なぜなら現在の生成AI界のトップは紛れもなく「生成AIを開発するための半導体を製造して売る企業」だからです。

その筆頭としてエヌビディアがあげられます。エヌビディアの株価はこの2年間で3倍にまで成長しており、市場からの期待も高まっています。

ChatGPTから始まった生成AIブームを機に、一気にITテク大手がAI開発に乗り出し、AI開発に必要なGPUをOpenAI、Google、Meta(旧:Facebook)、Amazon、xAIなど潤沢な資金を抱えるITテク大手企業がエヌビディアのGPUを買い漁っているのです。

つまり、現在の状況だと、生成AI産業の川上・川中に位置している企業が一番儲かる流れといえるでしょう。

業種 主なAI関連銘柄(ティッカー)
川上 半導体メーカー エヌビディア(NVDA)、ラムリサーチ(LRCX)、AMD、ケイデンス・デザイン・システム(CDNS)
川中 インフラ企業(データセンター・クラウド関連) アリスタ・ネットワークス(ANET)、スーパーマイクロコンピューター(SMCI)
川下 サービス提供会社 Google(GOOG)、Amazon(AMZN)、Meta(META)

↑生成AI業界の川上・川中・川下マップ。

1848年、アメリカのカリフォルニア州で始まった「ゴールドラッシュ」で一番儲かったのは金を掘るつるはしを貸した業者だったといいます。

その他にも、金を掘るのにも丈夫なズボンを作った会社、鉱山周辺に宿泊施設を持ってた人などが儲かりました。

しかし、つるはし業者のビジネスも楽ではありません。儲かるビジネスが見つかれば、新たな競合が現れ、競争が生まれます。

この話しを生成AI業界に置き換えると、現在のトップはエヌビディアですが、その競合はすぐに現れるでしょう。

すでにAI用のGPUを開発し始めている企業はたくさんあります。インテル、ブロードコム、クアルコム、AMDはエヌビディアが競合として認めており、OpenAIやソフトバンクもAI用のGPUを開発するプロジェクトを始めています。

GPUを開発するための工場の建設など資金も時間もかかるためエヌビディアの参入障壁は高いと考えられがちですが、その障壁は意外にも簡単に崩されるのではないかと私は考えます。

今すぐにという訳ではないですが、エヌビディアがGPUを独占販売できている理由には以下の2つの理由があると思います。

  1. エヌビディアがもともとGPUを作っている企業であった
  2. ChatGPTから生まれた生成AIブームが前触れなく訪れた

つまり、エヌビディアは先行者利益を享受している状況であり、そのシェアを近いうちに削られる運命にあるということです。

私はそのシェアが削られるまでに3、4年は見積もっていますが、その期間が短くなることも考えられます。

GPUの需要過多は2026年まで続くと考えられていますが、それまでにエヌビディア意外の有力なGPUを開発する企業が出てきても不思議ではありません。

また、現在は半導体メーカーが儲かる仕組みとなっていますが、いずれAIサービスがマネタイズ方法を確立することも考えられます。

その時こそAppleが生成AI界の勝ち組となるときで、現在のようなバブルのような状況ではなく生成AI界全体が盛り上がる時期になるといえるでしょう。

参考文献 ・「AIは儲からない」は本当? ウォルマートらがAIで稼ぐために磨く「6つの能力」儲からない人工知能 ~AIの費用対効果の“落とし穴”So far, AI hasn’t been profitable for Big Techstatcounter Search Engine Market Share JapanGlobal Smartphone Shipments Market Data (Q1 2022 – Q4 2023)アップル、 iPhoneへのグーグルAI「Gemini 」搭載で交渉中-関係者Google reportedly pays $18 billion a year to be Apple’s default search engineAIユニコーンInflection AIが個人向け事業を断念、CEOはMSへ移籍For Data-Guzzling AI Companies, the Internet Is Too Small世界が驚いたiPhone筐体の切削加工、アップル去るデザイナーの哲学2007年第3四半期~2023年第4四半期 世界のスマートフォン出荷台数にiPhoneが占める割合Apple’s Mac takes 16.1% share of U.S. personal computer market in Q423 – Gartner米エヌビディア、中国ファーウェイを最大の競合企業と認定ソフトバンク創設者の孫正義氏が15兆円の資金を投入してNVIDIAに対抗するAI半導体ベンチャーを設立する「プロジェクト・イザナギ」を推進か

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